培養肉とは、動物の細胞を培養して作る肉
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培養肉とは、動物の筋肉などの組織細胞を培養して作る人工肉・人造肉だ。
世界の人口増加や途上国の経済発展に伴い、食肉の消費量が今後、数倍に拡大すると考えられている。
ところが食肉生産の環境負荷が、大きな問題となっている。
近々90億人に達すると言われている地球人類に、十分な食肉を提供するには、地球は狭すぎるのだ。
特に牛肉生産には、広大な土地と、大量の飼料が必要で、さらに糞尿による水質汚染も大きな問題だ。
そこで大豆やエンドウ豆を使った植物由来の代用肉の、開発と製造がすでに始まっている。
植物由来の代用肉は、動物を飼育するのに比べてエネルギーコストは半分、必要な農用地も大幅に少なくて済むのだ。
宇宙ステーションや、月や火星で肉を生産する
一方、肉牛の細胞を培養して、工場内で肉をつくろうというプロジェクトも始まっている。
培養肉は、人類が宇宙に進出して生活する場合の食料生産に必要な技術だ。
狭い宇宙ステーションの中では、牛や豚をたくさん飼うわけにも行かない。
月や火星に人類が住んだり、他の恒星系にスペーストラベルするようになっても、同じ事が言える。
そのため、宇宙区間で肉を食べれるようになるには、宇宙ステーションや宇宙船内部の工場で、肉を作る必要があるのだ。
日本のJAXAでも、「宇宙食料マーケット」と称して「Space Food X」というプログラムを、2019年にスタートしている。
そしてこの培養肉の技術は、広大な農用地の必要が無く、狭い国でも食肉生産を可能にするため、食糧危機にも応用できるモノと考えられている。
ハンバーガー一個、3,000万円?!
培養肉の研究は、21世紀に入ってから本格化し始めた。
そして2013年には、オランダのマーストリヒト大学教授のマーク・ポスト医学博士のチームが、牛の幹細胞から作った培養肉で、ハンバーガーを作ってロンドンで試食会を開いた。
この人造肉ハンバーガーを作るのにかかった費用は、なんと一個あたり日本円で3,000万円以上だったという。
培養肉はその後、一個あたり1000円台半ばくらいで作れるようになっているが、それでもまだまだ高く、大幅なコストダウンが必要だ。
また現状では、培養肉は挽肉の形でしか作ることが出来ず、味も本物の肉には到底敵わない。
人工肉の実用化が、ハンバーガーのパティから始まっているのは、挽肉を作るのが比較的簡単であるという事情による。
モモ肉やロース肉のような筋肉状の培養肉は、作るのが難しいのだ。
因みに、牛一頭から作ることが出来る培養肉の量は、最大で牛40万頭分で、将来的には、40万頭を飼育するスペースが節約できるという。
培養肉開発に、先進国が血眼になる理由
牛肉の培養は、アメリカやヨーロッパ、イスラエル、そして日本など、様々な国や企業で開発が行われている。
牛肉生産には広大な土地が必要だし、牛肉は比較的高く売れるため、研究ターゲットとなっている。
しかし先進国の企業が、人造肉開発に膨大な投資を行っているのには、別の意味もあるだろう。
というのも細胞の培養というと、ノーベル賞を受賞した山中教授のiPS細胞が思い浮かぶ。
iPS細胞は、何の組織にも発達できる細胞で、様々な器官や臓器を作り出すことが可能になる。
牛肉の培養も、肉牛の幹細胞を増やして筋肉にしようとしているわけだから、iPS細胞から内臓を作るのと技術的にはそんなに離れていない。
となると、食肉の生産のために研究開発した技術が、臓器培養にも応用できる可能性だってありえる。
医薬品というと、かつては合成化学の分野で生産されることが多かったが、現在は大腸菌やキノコなどを使って大量生産してるしね。