不動産株が春に上がる理由
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春に騰がりやすい銘柄として、不動産株が上げられることもある。
分譲住宅や、分譲マンションなどは、2月や3月の成約が非常に多い。
というのも4月から新生活をはじめるために、年が明けたら引っ越したいという人が非常に多いかららしい。
一方、不動産会社の決算は、3月末になってることが多い。
不動産会社の営業部員は、年度末までに少しでも売り上げを上げようと、一生懸命クロージング(成約)に励む。
つまり1月から3月の第4クォーターは、家を買いたい人と家を売りたい人の利害が一致するため、成約率が大きく上がって売り上げが伸びる。
そのため年度末が近づく2月3月には、不動産売却のIRがたくさん出されることになる。
「○○にある分譲マンション、完売しました」「○○にあるリフォームビル、売れました」こういったIRがいろいろ出される。
不動産売却のIRが出れば、事業計画がうまく進んでいることが分かるから、それで不動産株が値上がりするというわけだ。
と言っても、あまり大手の不動産株が、大きく上がることはまずない。
中小の不動産投資会社が業績を上げたり、テーマパーク開発などによって、株価が大きく上がると言うことはあり得る。
しかしすでに大企業になってしまった不動産会社は、決算を黒字に保つのに四苦八苦している。
今や日本中の不動産のほどんどが、価値が下がる「劣化資産」になったため、新しく土地を買って建物を建てても、完売出来るかどうかも怪しくなってきたからだ。
不動産株は、あまり期待出来ない
不動産株への投資は、あまり効率が良い投資とは言えない。
というのも日本の現状を考えると、不動産は将来性が小さく、不動産ブームも来るとは考えにくいからだ。
元々日本人は持ち家志向が高く、人口もどんどん増えていたから、1993年のバブル崩壊までは、土地価格は右肩上がりに上がっていた。
日本のように歴史が長い国では、農業に適した土地は開発され尽くしていて、新たに工場を作ったり住宅を作るときは、農地を潰して作るしかない。
そのため高度経済成長で人口が爆発的に増えて、住宅需要が高まっても住宅を作る土地はない。
そこで農地を高い値段で買って宅地にしたり、都市近郊の山地を開拓して住宅を作った。
住宅地の開発コストが高かったため、土地価格はずっと上がり続けていたわけだ。
そういうわけで土地の値段は下がらない、…という「土地神話」ができていて、土地は安全資産であったわけだ。
ところがバブル崩壊以降、土地の値段はダラダラと下がり続け、商売に適した商業地だとか、人気の高い高級住宅地でないと、不動産は劣化資産になった。
というのも持ち家率は70%を超え、新しく家を買う30代40代の人口も減り始め、住宅需要が目に見えて下がりはじめたのだ。
株価は需給関係で決まるが、不動産価格も需給関係で決まる。
買いたい人が少なければ、いくら良いビルを作ってもテナントは入らないし、分譲マンションも売れ残りが発生する。
となると賃貸料も不動産価格も下がるから、新しくビルや住宅を作っても儲からない。
さらに加えてアベノミクスによる円安誘導策による資材値上がりと、人手不足による人件費増大が、不動産企業の業績を圧迫した。
団塊ジュニア世代が40代で、新築住宅への需要があるうちは、住宅建設も多少回復するだろうが、それで大きな利益を上げることはできない。
そう考えてくると、儲かる開発は、東京や大阪のど真ん中しかなく、東京駅周辺や大阪駅周辺の再開発くらいしかチャンスは無さそう。
もちろん、震災復興需要があるうちは、それなりに活況を呈するのだろうけど。